花明かりの夜に

すっかり日が落ちた夕暮れのなか、提灯のあかりをたよりに足早に春日家へ向かう。

結局、送ってもらうのは断って、ひとりで歩く夜の道。

見上げると、黒い雲に囲まれた月が冬の空にくっきりとかかっているのが見えた。


(そう。

あの日もこんな月がかかっていたっけ――)


あの日――


沙耶が十六になってしばらくの頃。

沙耶によくしてくれた旅芸人一座の座長が、とつぜん倒れて、ぽっくり逝ってしまったのだ。


最初はただ悲しみに明け暮れていた沙耶だったが。

座長が亡くなったとたんに崩壊をはじめた一座を目のあたりにして、いつまでも悲しんでいるだけではいられなくなってきた。


いろんな個性の集まりがまとまって生活し、仕事していけるのは、座長の手腕に負うところが大きかったのだ。