花明かりの夜に

「だって、相手に手痛い反撃を食らうかもしれないんだから」

「……でも、竹刀ですし……」

「真剣を持ったことはないの?」

「……ありません」

「……ほう」


意外だ、とでも言うように、形のよい顎をかるく上げてうなずく。


「あれだけ剣技の心得があって、真剣を持ったことがないと?」

「あの……わたしはいつも模擬刀を……」


話の雲行きが怪しくなってきて、もごもごと口ごもった。

これ以上何か言うと、低俗な旅芸人の一座にいたことがばれてしまいそう。


「今朝太刀をつきつけられても、竹刀を振り下ろしても、君は顔色ひとつ変えなかった。

どれだけ場数を踏んでいるのかと」


紫焔は、さもおかしそうにくすくす笑った。