花明かりの夜に

そんな沙耶を眺めていた紫焔は、不意に口を開いた。


「まったく君は、あんな剣術の使い手には見えないな。

そうして茶菓子を頬張っていると、ごく普通の女に見える」

「……ごく普通の女ですから」

「ごく普通の女はあんなふうに木登りはしないよ」

「ときどき木登りもする、ごく普通の女です!」


豆餅を頬張ったままもごもご抗議する沙耶に、紫焔はさもおかしそうにあははと笑った。


(あ……)


少年のような、明るい楽しげな笑い。


(こんな風に笑うと、まるで別人ね――剣を振り回しているときとは)


――ふと、そんなことを思った。