花明かりの夜に

じゃあ、今日はおいとまします。と、踵を返しかけて。


(暮六つまで、という約束をたがえると、また馘にするなどとおっしゃるかもしれない)


また一悶着起こすのも面倒だ、とばかりに、少し離れて座る。


「……では……その……いただきます」


(上等そうなお茶菓子……どういうつもり?)


仕事をねぎらうつもりなのか、何かの餌か。


“何か食いに行こうぜ。何でもごちそうするから”

――あのとき笑顔で甘い言葉を掛けてきた、あの男。



あめ色の皿にちょこんと乗った豆餅のひとつを遠慮がちに持ち上げた。

こわごわと口にふくむ。