花明かりの夜に

「……」


仕事が上がると、急いで着替えてさっき来たばかりのこの部屋。

お茶と茶菓子が2人分の膳にきちんと用意されている。


(早く来すぎてしまったかしら。

まるで仕事が上がってまっすぐに飛んで来たような……この部屋に呼ばれたことを喜んでいるように思われたくないのに)


沙耶のそんなひそやかな懸念をよそに。

紫焔はただ無言で茶菓子をすすめたきり、優雅にお茶をすすっている。



(もしかして、また急に竹刀を振り下ろすおつもりかもしれない。

――油断ならないんだから)


紫焔のちょっとした動きにいちいちドキリとして、ついびくんと反応しそうになる。

そんな沙耶のようすに、紫焔は怪訝そうに形の良い眉を寄せ、首をかしげた。