花明かりの夜に

「春日さまには恩義があるからです。

なので、申し訳ありません」


沙耶はきっぱりと言うと、籐カゴの中の衣類を指で示した。


「では、先に洗濯へまいります。

お掃除はのちほど、お部屋が空いているときにお伺いしますので」


沙耶はふすまの前にさっと座して、片手を掛けた。

するすると開ける。

何の未練もなく廊下へ出ると、座礼した。


「では、失礼いたします」


閉められようとするふすまを、すっと伸びた紫焔の手がさえぎった。


「……まったく、ずいぶんあっさり誘いを断わってくれるね」


紫焔は、あきれたように肩をすくめた。