花明かりの夜に

「……ああ。春日の紹介で最近ここに来ることになった、というのは君か」

「はい」


かるく頭を下げる。


「その前には何を?」

「……」


(“その前”ですって――?

そんなこと聞いてどうするの?)


たたみかける紫焔の声に、沙耶はためらって口をつぐんだ。


(旅芸人の一座に長年いたなんて、言えやしない。

いかにも身元があやしいもの)


有象無象が出入りする、あやしくいかがわしい業界なのだから。