花明かりの夜に

「寝込みを襲うというのはずいぶん大胆だね。

顔を売っておこう、という魂胆?」


しばし待てど、返事はない。


「……?」


女の方に歩み寄って、斜め後ろからそっと手元をのぞいた。

細い繊細な指先がくるくると魔法のように着物をたたむのが、いかにも手馴れていて小気味よい。

これまでの苦労がうかがえるような、使い込まれた指先。


憂いを秘めた大きな瞳は、想いにふけるようにぼんやりと宙をさまよっていた。

心はどこか、別のところにあるようだ。


ひととおり終わると、女は立ち上がりながらくるりと振り返って、すぐそばの紫焔にぶつかりそうになって悲鳴をあげた。