花明かりの夜に

(これは――)


しばし言葉が出て来なかった。


(なんて美しい若さまなの。

――いろいろなお噂が絶えないはずね)


齢二十五になる藩主の若君、紫焔。

魅入られたかのように、ただぽかんとその姿に見とれてしまう。


目と目が合うと、黒い瞳があでやかにほほえんだ。

自分に見とれる女へ、みずからの魅力を最大限に伝えるようなまなざし。


「……」


(あ……)


じわりと、頬に朱が差す。