花明かりの夜に

 * * * *


馬の上から振り返ると、雲ひとつない空の下で旅籠のみんなが手を振っていた。

春の強い風で桜の花びらが一斉に舞うさまは、まるで二人を祝福する紙吹雪のよう。


(みんな、ありがとう)


一緒にいられたのは短い間だったけれど、紫焔のもとへ行くという沙耶に、みんな泣いて祝福してくれた。


「まさかなあ、若さまの想い人がすみれちゃんだっただなんて」

「すみれちゃんじゃなくて、沙耶ちゃんだよ」

「皆に自慢が出来るね、ご主人」

「幸せになるんだよ」

「……ありがとうございます。本当にお世話になりました」


(旅籠の皆さんといい、桔梗さまといい桂さんといい……

こんな優しい人たちに囲まれていながら、わたしはどうしてあんなに孤独だったんだろう。