花明かりの夜に

「一緒に帰ってくれるね?」


やさしい笑みに、涙がぽろりとこぼれて。

これまで突っ張っていた固い鎧がガラガラと音を立ててくずれていく。


(若さま……わたしは……)


“欲しいものを買いに行ったりしないの?”


わたしの欲しかったもの。


帰れる家が欲しかった。

安心出来る場所が、ずっと欲しかった。


身を預けられる胸が、抱きしめてくれる腕が、欲しかった。



「紫焔さま……

わたしを、どうか、紫焔さまのおそばに――」


続く言葉は、ふたたび塞がれた唇の中に消えた。