花明かりの夜に

おどけた口調にも顔を上げない沙耶に、紫焔は穏やかに続ける。


「君の傷の深さを見誤っていた。

――沙耶の過去など取るに足らないと、すべて知った上ですべてを受け容れると、

そして、君がとても魅力的だと、そう言いたかっただけなのだけど」

「……若さま」


やっと顔を上げた沙耶に紫焔はにっこりほほえんで、ふたたびしっかりと抱いて引き寄せた。

耳元で、そっとささやく。



「探したよ、沙耶」



(――え?)



「……なぜ?」