花明かりの夜に

「ご立派な人間なんてそうそういない。

だれもが弱くて、駄目で、どうしようもない存在なわけでね。

それを隠して、他人に対しては格好をつけている。それだけにすぎない」

「……」

「君のしていたことなんて、大したことじゃない。

君は誰も傷つけていない。傷ついたのは君一人だけだ。

取り返しのつかないことはなにもない」

「……」


まだ顔をそむけたままの沙耶の顔をのぞきこむように、紫焔はやさしく言った。


「……あんなことを言ってしまって申し訳なかったね。

やっと君を手に入れたと思って油断して、つい余計な口を――

ほら、わたしもどうしようもない人間だろう?」

「……」