花明かりの夜に


「なぜ出て行ったのかと聞いている」

「……あの時は勝手に出て行ってしまって本当に申し訳ありませんでした。

……どうかもう、わたしのことは放っておいてください」


(どこかの良家のお姫さまとご結婚なさるのに。

これ以上わたしに関わるのはやめて)


涙がにじみそうになるのを、唇を噛んでこらえる。


「理由をちゃんと話したら、放っておいてあげる」

「……」


“放っておいてあげる”


至近距離でうっすらとほほえむ美しい顔から、目をそむけた。


「……わたしは穢れた人間ですから。

若さまのお屋敷にお仕えするにはそもそもふさわしくない人間です。

……そもそもおそばにあがらなければよかったと思っています」