花明かりの夜に

頭がぐらりとなって、地面にぽっかり空いた穴へ落ちそうになるのを何とか呼吸を整え、出来る限り仕事向きの声を出した。


「では……お茶をお持ちしますから」


そっと手を振りほどこうとする沙耶を、よりいっそう強くつかむ。

あまり力を入れているように見えないのに、万力のように強い。


「そんなことを聞きたいんじゃない。

沙耶――なぜ、何も言わずに姿を消したの?」

「……」



不意に手首をぐいと引っ張られて。

沙耶は紫焔の腕の中におちた。


「きゃ、若さま、いけません――」


あたたかい腕に溺れそうになるのへ、必死でもがいて身を引き剥がす。