花明かりの夜に

(いい? 沙耶――

顔色ひとつ変えずに言うのよ)


ひそかにごくりと唾を飲み込んだ。

出来るだけ平静を装って、沙耶は口を開く。


「……若さま、ご結婚おめでとうございます」

「ああ、ありがとう」


紫焔は意外そうに眉を上げて、鷹揚にうなずいた。


「ずいぶん耳が早いな」


(若さま――否定されないのね。

読み売りの記事は本当だったんだ)


どこかで信じたくなかった自分に気づく。

足元の地面がなくなるような思い。