花明かりの夜に

「……!」

「逃げようったってそうはいかないよ」

「……若さま」

「目も合わせないなんて、相変わらず冷たいね」


黒い瞳がからかうように沙耶をのぞき込む。


(最初に目をそらしたのは若さまの方よ)


内心悪態をつきつつ。

心のどこかでほっとしていた。


(覚えていてくださったのね)


未練がましい自分。


「それともわたしの顔などもう忘れてしまったのかな?」

「……」