花明かりの夜に

まるで何ごとも無いかのように引き戸を閉めようとする沙耶に、ゆったりとした声が掛けられる。


「おや、これは何?」

「……え?」


顔を上げると、紫焔は行灯の向こうをのぞきこんでいる。


「落としものかな」

「……え」


(うそ……

わたしったら、また何か落としたの?)


「失礼いたします」


あわてて部屋の中に入ると。

行灯の手前で、すっと伸びた手に捕らえられた。

ぐいと引き寄せられて、思わず目をそらす。