花明かりの夜に

涙を流さんばかりに喜んで平身低頭する老主人にやさしげにほほえんで。

何か、その耳元に二言三言耳打ちをしたようだった。


(……?)


お互い小声で話していて、よく聞こえない。

主人は何度もうなずいているようだった。


「ところでご主人、あの景色のいい離れを使わせてもらっていいかな?」

「もちろんでございます、若さま!

すみれちゃん、奥の離れにご案内して」

「……かしこまりました」


主人に声を掛けられて、小屋に隠れ続けるわけにもいかなかった。


うつむいておそるおそる小屋から出る沙耶に、黒い瞳がちらりと投げられるも。

何ごともなくまた離れた。