花明かりの夜に

肩の向こうの笑みを含んだ黒い瞳と、目が合った。

流すように、ちらりと沙耶を見る目。


「驚かせるつもりはなかった――物音に、つい反射で」


引いた太刀がトンと音を立てて鞘におさまるのを見ながら、心臓は早鐘を打ったまま。


「い、いえ、とんでもありません」


(どうしよう……

――わたしったら、どうしてご在室かどうか、ちゃんと確かめなかったのかしら)


そう。

余計な、くだらないことばかり考えていて、確認を怠ってしまった。