花明かりの夜に

(当たり前よ――

わたしったら、何を勘違いしていたの?

若さまがわたしを相手にするわけないでしょう――理由もなく)


「まぁね」


涼やかな声には眠気が混じって。

やがて、沙耶の肌に手を回したまま眠りにつく紫焔のしずかな寝息だけが、暗がりに溶けていった。




 * * *