花明かりの夜に

考える間もなく。

沙耶の髪を束ねていた紐が切れて、肩に背中に長い髪がふわりと流れ落ちた。


「あ……」


(うそ――

まさか……紐だけを切った……?)


「美しい髪だ。おろしている方が似合う」


余裕の笑み。


「……うそ……」


(今までの手合わせは何だったの?

まったく隙がない――)


「――ねぇ、沙耶」


すり足で間合いを取りながら、紫焔はまるで茶の席のように口をひらく。