花明かりの夜に

緊張で喉が鳴った。


「……じゃあ、こちらのお屋敷のおつとめを辞めさせていただきます」


(いけない、そんなことを言っちゃ)


勢いで出た自分の言葉に青ざめる。

売り言葉に買い言葉。


沙耶の熱をかわすように、紫焔は軽く言った。


「……おやおや。桔梗のもとに戻る、と?」

「わたしが桔梗さまのそばで、昼間本を読んで差し上げます」

「……強情だね」


紫焔は余裕の表情でどこか儀礼的にほほえむと、お茶と茶菓子を優雅に指し示した。


「そうカリカリしないで、まずはお茶でもしたら?

落ち着いたら頭も冷えるだろう」