花明かりの夜に

いつもは着替えてからこの部屋へ来るのに、女中の藍の着物のままの沙耶に、首をかしげる。


「おやおや、君の方から話しかけてくれるとは珍しいね。

いつも最低限のことしか話さないのに」

「おとぼけにならないでください」


棘のある口調に、紫焔はかるく肩をすくめた。

肩に流れるつややかな黒い髪がさらりと動く。


「そんなに怒るようなこと?」

「わたしは疲れてなどいません。余計なお世話です」

「おやおや、ずいぶん険悪だな」


紫焔はフッと鼻で笑った。


「自分のところの使用人の便宜をはかることは別に特別なことじゃない。

これまでも、借金を先に立て替えたり、病気の母親の面倒を見たりしたことがあった」

「……」