花明かりの夜に

あの弥之介でさえ、最初声を掛けたときはとてもやさしかったのだから。

評価しているようなふりをして、言いなりになった途端に豹変した。


「実はね……いいご縁じゃないかと思っていたのよ。

だからこそあなたを、若さまのお手元に」

「桔梗さま、そんな」


沙耶は桔梗の言葉をつい途中でさえぎった。


「……わたしはどんな方であれ、家柄のよい方に釣り合うような人間じゃないんです」

「……沙耶さん。

何のことであれ、何かを言い訳に自分の心をいつわるようなことがあってはいけませんよ」


やさしい口調ながら手厳しい言葉に、沙耶は首を振った。


「……いつわるだなんて。

そういうんじゃないんです。本当に」