花明かりの夜に

“若さまが誰かを指名するなんて、初めてなんだから”


(言うことをはいはいと聞いたがさいご、きっと若さまはわたしへの興味などあっさり失うでしょう。

――それだけのことよ)


男なんてそんなもの。

クジが当たるまで通い続けて、クジが当たった次の日からは興味をなくす。

結局のところ、自分の欲求がすべて。

こっちがどう思って、どう感じているかなんて、誰も気にしない。


(――本当に?

わたしに本をくださって、わたしの夢を聞いてくださったのは誰?)


「若さまは沙耶さんのことをずいぶんお気に掛けてくださっているんじゃないの?」

「……」


斬りかかったり、勝手に桔梗と話をつけたり、

茶菓子の好みを気にしてくれたり、突然本をくれたり……


(いいえ、決してそんないいものじゃ――)