花明かりの夜に

沙耶は思わず眉をひそめる。


「理由をおっしゃっていましたか?」

「住み込みのほうが疲れないだろうし、帰りが暗くなるから気になっているって。寒い季節だしね、って」

「疲れなんて……」


(わかってる。単なる口実ね)


疲れてなどいないもの。


(それに、帰りが遅くなるのは若さまと一手交えているからじゃない。

――わたしが若さまの言うなりにならないのが気に入らないの?)


きっと何事も、自分の思い通りにするのに慣れているだけ。

沙耶は小さく首を振った。


「大変でもありませんし、疲れも残るほどの仕事量じゃありませんから」