花明かりの夜に

「……どうしたの?」

「このところ遅くなってしまって、あんまり桔梗さまの本が進んでないんです」

「ほう」


片方の眉を上げた紫焔に、口早に続ける。


「早く読みたいとおっしゃっていた本なので」

「……」


紫焔は軽くうなずいた。

その口元が、ほんの少しニヤリと歪んだような気がした。


「いいだろう。今日はもうお帰り」


いつもながらのあっさりした態度が、こういうときはありがたい。

ただ、何か含みのある態度が少し気になった。