花明かりの夜に

心当たりなどまるでない。


“昨日の朝の身軽な女中は君かな”


(そういえば……若さまはあんなことをおっしゃっていた。

木に登っているのを見て、自分の担当にしたってこと?)


沙耶はひとり首をかしげた。


(よくわからない。変な若さま)


紫焔の部屋の掃除に、木登りの能力が必要とは思えない。


(屋根裏の掃除でもさせたかったの?

――高いところの掃除とか?)


結局わからず肩を軽くすくめながら。

知らず知らず、沙耶は少し、ほほえんでいた。



 * * *