花明かりの夜に

――そういえば昨夕、ちょうど仕事を上がるころ、馬にまたがって出て行く姿を遠目に見た。


“見て、若さまよ”

“こんな時間からお出かけということは……ほら、きっと……”

“幸運なお相手はどちらのお嬢さまかしらね”

“○○さまじゃないの?”

“あれは、○○さまの一方的な横恋慕らしいわよ”

“えぇ? じゃあ……△△さま?”


女中たちがわいわい騒いでいると、たいていその視線の先には紫焔の姿がある。

それがこの10日間で学習したこと。



藩主さまの妙齢のあととり息子。