花明かりの夜に

親しげに沙耶の肩をポンと叩く。


「ほら、あたし奥方さまの着物飛ばして傷つけちゃったでしょ。

それで新米の仕事に戻されちゃったんじゃないか、なんて話してたの。

そしたら、そう教えてくれたんだ、女中頭の春花さんが」

「……」


(……なぜ?)


「若さまが誰かを指名するなんてこと、初めて聞いたんだから」


桂はうふふと含み笑いをすると、楽しそうに鼻歌を歌いながら部屋を出て行った。


(本当に――?)

(若さまが、わたしを――?)


ほんの少し、心臓の鼓動が早まる。


(なぜ?)