花明かりの夜に

「身寄りがない子がそこに住めて、いずれ旅立っていったとしてもいつでも帰ってこられる、家を用意してあげたいなって。

いつもそこには同じ誰かがいて、それぞれの子どもの成長をずっと見守ってくれるような。

――何があっても、ずっと変わらず愛してくれるような」


普段とは違う、想いにふけるような遠い目をして語る沙耶を、紫焔はじっと見ていた。

ときどき見る、心がどこかへ行ってしまったような目。


「なるほどね。

沙耶、君は身寄りのない子に“母親”を作ってあげたいのか」

「……」


(母親――)


「君はやさしいね」


おだやかな言葉にも、沙耶はかたくなに首を振った。


「やさしいとか、そんなんじゃないんです」