花明かりの夜に

「読んでみるといい。面白いから」


(本……?)


沙耶は驚いて、ただただじっと紫焔の手元を眺めた。


「そんな……大事なものをお借りするわけには」

「いや、これは君にあげる」


紫焔は本を沙耶の膝元に置くと、片手をひらひらと優雅に動かす。


「これを……わたしに?」


戸惑いを隠さない沙耶に、紫焔はにっこりとほほえんだ。


「沙耶は本を読むのが好きなようだから」

「……」


何か熱いものでも手に取るように、おずおずと本を手にした。

それは、紫焔のぬくもりをまだほんのりとまとっていた。