花明かりの夜に

そんな沙耶を、紫焔はちらりと横目に眺める。


「お給金で、何か欲しいものを買いに行ったりしないの?」

「……」


(欲しいもの……)


“沙耶。何か食いに行くぞ。

欲しいものがあれば言え”


(欲しいもの……ってなんだろう)


欲しいと思ったものは、言えば弥之介がいつでも何でも買ってくれた。

だけど、それでうれしいと思ったことなんて、一度もなかった。


きっと、そんなに欲しくなかったんだろう。


借りていた芝居小屋も、そのうち客からの贈り物でいっぱいになった。

大抵は食べ物や装飾品。ときどき、どこかのおみやげ、民芸品やら……