花明かりの夜に

「でも?」

「あの……帰る家がなくて……」


言いよどむ沙耶に、婦人は気の毒そうに眉を下げた。


「まぁ、かわいそうに……

いらっしゃい。すぐそこだから」

「いえ、そんな……ご迷惑お掛けしますから」

「何言ってるの。あなたまだほんの子どもじゃないの」


何も聞かずに、桔梗は沙耶の手を引いて家に連れ帰ったのだった。

少しもためらうことなく。



 * * *



「ねぇ、沙耶」


すぅっと伸ばした指先がかるく茶菓子をつまんだ。