花明かりの夜に

(お金もあてもないけど――

何があっても、今までよりずっとマシよ。


たとえ野垂れ死にそうになっても、あそこには戻らない。

もう二度と、男の言いなりになど、ならない)


桜があまりに美しくて。

ぼんやり見ていた沙耶は、いつの間にか涙が止まらなくなっていた。

悔しくて、悲しくて。腹が立って。

穢れた汚い自分に。


泣いたのは、弥之介に芝居小屋に連れて行かれて乱暴されたあの日以来のことだったかもしれない。



日が落ちる寸前。

通りかかったどこかの上品な婦人と目が合った。

きれいな身なりをして、とてもまぶしくて。

ほんのりと口元にほほえみを浮かべて歩いていた婦人は、ふと沙耶に目を止めた。