花明かりの夜に

必死で手を振る沙耶の声にかぶせて、暮六つの鐘が鳴った。



 * * *


「自由、なのね」


爽やかな風に頬をくすぐらせながら、思わず口に出してつぶやいていた。


(もう、知らないどこかの男に着物を脱がされなくてもいい――

汚い手でベタベタと体を触られなくてもいい――

間近で感じる荒い息。紅潮した脂ぎった肌――

もう二度と嫌よ……あんなのは)


離れてみると、自分で思っていたよりずっと、心が深く傷ついていたことに気づく。

今までは、逃れられないから自分を誤魔化していたのだ。


(どの男も息を荒らげて、目を血走らせて――

本当に気持ち悪い。