花明かりの夜に

“10年と少し前だったかしら、大規模な治水事業を立ち上げてなさってね。

今この町できれいな水が飲めるのも若さまのおかげよ”


うれしそうに語る桔梗の言葉が脳裏をかすめた。


(若さまは、次の事業のために夜あちこちお出かけに……?)


「まぁ、半分娘目当てのところもあったけれど」


くすりと笑う紫焔に、沙耶はがくりと姿勢を崩す。


「……あら」

「瓦版はいつもあれこれ好き勝手書いてくれるからね。

それを楽しみにしている人もいるようだから放っているけれど」


紫焔は面白そうにくすくす笑う。


「そんなのを真に受けないで、直接聞いてごらん。何でも話してあげるから」

「いえ、ですからその……ゴミを拾っただけですから……」