花明かりの夜に

この、藩主さまのお屋敷にお仕えにあがってから、今日で10日めになる。


質素ながら、これまでお仕えしていた春日さまのお屋敷と比べるとさすがに広い。

中庭を右に臨みながら、長い廊下をすたすたと歩く。


(ええと、ここを左だっけ)


廊下を奥へ奥へと進んで、めざす部屋の前にたどり着くと、さっと廊下に正座して、しずかにふすまを引いた。


「失礼いたします」


誰もいない静かな部屋に向かって深く座礼をする。

座したまま部屋に入ると、ふすまをそっと閉めた。


落ち着いた、質素な部屋。

そして、きちんと片付いている。