先生がゆっくり近づいてくる。私の目の前までくると、口を開く。

「俺は教師だから。吉里と、これ以上近づけない。」

そう言って1歩後ろに下がる。

「けど、俺は好きでもないやつにキスなんかしないよ。」

ほら、そうやってまた期待させる。

「生徒じゃなかったら…?私が……生徒じゃなかったら、好きになってくれた…?」

先生はなにも言わず、また切なく笑った。

「もう暗いし、送ってく。」

「いい。」

先生の優しさを私はアッサリと断る。

もうこれ以上、先生と一緒にはいられない。好きなのに…こんなに近いのに手が届かないなんてね……

「いいから、行くぞ。」

そう言って腕を掴まれ、無理やり連れていかれる。

「ほら、乗れよ。」

わざわざドアを開けてくれる先生。車に乗り込むと、香水と、少しのタバコの匂いがした。