キスのワケ。

しばらくして義樹が私を解放する。

「光……俺と付き合ってください。」

義樹は面と向かってはっきりと言う。

やっぱり……先生が好きだよ。でもきっとこの先ずっと叶うはずない。義樹を好きになりかけてる今なら、きっと先生を忘れられる。

「よろしくお願いします。」

この答えしかないと思った。

こう思った私は最低だね。彼を利用して先生を忘れようとしてる。
ごめんね、義樹…


キーンコーンカーンコーン

「あ………」

5時間目終了のチャイムがなる。

「サボっちゃったね(笑)」

「だな(笑)」

「じゃあ…戻ろっか?」

「ん。」

私がドアに向かおうとすると腕を引っ張られ、一瞬だけ触れるだけのキスをされる。

「行くか。」

そして何事もなかったかのように歩き出す義樹を見つめたまま、私は少しの間動けずにいた。