私も印刷室から出ると一気に階段を駆け上がり屋上に出る。運よく誰もいないことを確認すると我慢していた涙が溢れ出す。

「…ヒック………ぅ…ヒック…せ…んせ……」

「なんで泣いてんの?」

後ろから声がして振り向くと困った顔をした真田が立っていた。

「さな……だ…」

「ん?どした?」

優しく聞いてくるから余計に涙が溢れる。

「わ……私…も………やだ……」

ギュッ

後ろから真田に抱き締められる。
だけど今はなぜか真田の腕の中が心地よくてこのままでいたいと思った。


「吉里…」

先生とは違う声で同じように私を呼ぶ。

「俺はお前を泣かせたりしないから………俺にしろよ。」

私の耳元で甘くささやく彼に思わずドキドキしてしまう。

「い…今……なん…て…?」

突然のことに頭がついていかない。

「だから、俺を好きになって?」

そう言って彼は私にキスをした。先生のとは違う、深く求めてくるようなキス。

「……ん…ふぁ…さな………だ…」

やっとのことで彼の名前を呼ぶと、私のことを一旦解放した。

「義樹。」

「え?」

「義樹って呼べ。」

「ぷっ」

顔を真っ赤にしながらそんなこと言うから思わず吹き出してしまう。

「な!?わ、笑うなばか!」

「ごめんごめん、義樹?」

言われた通り名前を呼ぶと彼はもう一度私を抱きしめ、キスをしてきた。
さっきよりも優しく、甘いキス。
そんな彼を私は、拒まなかった。