ず、と鼻をすすった私に、先輩は小さく笑う。
....私の好きな、笑顔だ。
「普通のひとなら遠慮するようなことも、積極的にやってたよね。...スゴいなぁって、思ってたんだ。それから校内で見かけて、名前を知って、気づいたら目で追うようになってて」
好きになってたよ、と噛みしめるように言う。
....先輩は、素敵なひとだ。
本当に本当に、素敵だ。
「...痴漢のやつも、普段の僕なら絶対あんなことしなかった。君ならこうしただろうなと思って、気づいたら身体が動いてた。...最後は結局君に、助けられたけど」
....ううん。
私は、首を横に振る。
あのとき先輩がいなかったら、きっと私は心細くなってた。
私と同じように思って、行動するひとがいるんだって、嬉しかったんだ。



