心臓が、ぎゅーって掴まれるのを感じる。
先輩は何か吹っ切れたような顔をして、赤い顔で私を見つめた。
そして、追い討ちをかけるように言う。
「....ずっと、見てた。電車の中で、君のこと」
心臓が、痛い。
先輩はあのときと同じように、綺麗な目で、まっすぐに。
....あのときより少しだけ甘い色をして、私を見つめた。
「...いつも楽しそうに、友達と笑ってて。でも満員電車で、お年寄りが乗ってきたときとか、よく席譲ったり、優先席に座ってる若いひと注意したりしてたよね」
....恥ずかしいな。
見られてたのか、あれ。
私はいつも、持ち前の正義感の赴くまま行動していた。
里菜とチョコちゃんは理解してくれるけど、そうじゃないひとも今までたくさんいた。
....そういうのもあって、好きなひとと『友達止まり』だったのも、わかってた。



