私は負けないように、教科書を握る手のひらにギュッと力を込めた。



「で、でも、やっぱりこんなの、おかしいし」

「君が言ったんだよ、『友達から始めませんか』って」

「....わかってます。失礼なのは重々承知です。私のこと、嫌いになってくれて構いませんから」

「...嫌いになんか、なるわけない」


先輩のその言葉を聞いて、私は振り返った。


彼はあのときのように、強くまっすぐ、私を見ていて。


鳴り響くチャイムの音が、遠くに聞こえた。




「....なんで先輩は、友達になってくれたんですか....?」


私の声は、震えている。

先輩の瞳はやっぱり、迷いはなかった。