私はぎゅっと目をつぶって、先輩の手が離れるのを待った。
離れた瞬間、そっと先輩から一歩、下がる。
そして一度、お辞儀をした。
「....失礼、します」
私のものとは思えないくらい、弱々しい声だった。
言った瞬間、里菜も何かを察したのか、慌てたように先輩達に「失礼します」と言う。
スタスタと早足で教室へ戻る私のあとを、ついてきた。
「....ま、マルっ。マル!」
里菜が私の腕をつかんで、引き留める。
私は、俯いたままだった。
「ど...どうしたの?大丈夫?」
「.....」
「汐見先輩、心配そうな顔してたよ」
「.....私、最低」
「え?」
このままじゃ、ダメだ。
このまま、先輩と『友達』関係を続けてたって、ダメだ。
だって先輩は、優しすぎる。
優しく、優しく、私に想いを伝えてくれる。