わかってる。
ちゃんとわかってるんだけど。
やめろって心が思ってるのに、口が動く。
「...汐見先輩、最近その人とよく一緒にいますよね」
最悪な形で表に出た、私の想い。
こんな、真っ黒の状態で出すつもりはなかった。
嫌だ、気づかないでほしい。
何も言わないでほしい。
ぜんぶ自分が悪いのに、涙が出そうになった。
「..............」
落ちた沈黙。
一年の階に繋がる階段まで、もう少し。
早く離れなきゃ。
じゃなきゃ、無理。
こんなみっともない嫉妬、これ以上先輩の前に晒したくない。
早足で階段へ向かおうとしたら、後ろから先輩の声が聞こえた。
「......百合、あのさ」
「丸岡ぁー!」
先輩の声を、誰かの声が遮った。
振り返ると、階段のそばに児玉くんがいた。



