「その段ボール、ひとつお持ちしますよ~」
「...い、いやいいよ」
「一緒に歩く口実にしたいんですよ」
試しに言ってみたら、先輩が立ち止まった。
ちらりと顔を見ると、彼はムッとしていた。
だけど、その顔は赤い。
ほのかに熱を持った目が、私をまっすぐに見ていた。
「....いきなり、何なの?」
「何なのってなんですかぁ。後輩が先輩に親切したらダメなんですか?」
「そうじゃなくてさ....」
たぶん、ズルいって思われてる。
わかってるから、何か言われる前に背伸びして、上の段ボールを取った。
「...重くない?」
「大丈夫です。私、結構力あるんで」
「...ありがと」
やっぱり彼は、どこか不満そうだ。
からかってるつもりはないんですよ。
弄んでるつもりもないです。
ただ、私が安心したいだけ。
こういう形でしか好きなひとの気持ちを確かめられないなんて、ほんと私は中学生男子だ。



