「....あれは...ほんとにごめんなさい...」
「いいよ、あれはあれで嬉しかったし。ただ、抱きつくのは良くてキスはダメって、本気で友達としてしか見られてないんじゃないかって焦ってさ」
「........」
申し訳なさすぎる。お化けが怖すぎたとはいえ、私も冷静さを欠いていた。軽率に人に抱きつくべからず。
「まあ僕も僕だけど。嫌がる君を無理矢理お化け屋敷入れて、君が『出たい』って言ってるのに『出ない』って言って。....ちょっと理性飛んでたよね、ごめん」
「いえ....」
「手、痛かったよね？」
「.....はい」
「ごめん。...君が過去に、好きになった男がいるんだと思ったら、なんか無性に怖くなって」
....やっぱり、そうだったんだ。
不安にさせるってわかってたけど、嘘はつけなかったし。
仕方なかったって、わかってくれるのかな。
「....昔の話、ですよ」
「でも、今の百合には僕以外の奴を好きになる権利がある」
「.....ないです。それに、無理です。先輩以上の人、見つかりっこありません」
さすがに恥ずかしくて、顔をそらして言うと、先輩は黙った。
....う。だけど、本心なんだもん。
先輩、すごいな。
こんなこといつも言ってるのか。
