「......出ようか」
落ち着いた声で、彼は言う。
私はしばらく呆然として、その場から動けなかった。
だけど彼は、どんどん先へいく。
急いで追いかけるけど、追い付けない。
お世辞にも回転が早いとはいえない頭で、私は必死に考えた。
....えっ、と。
失敗したの、かな。
また、間違えた?
それも、本当に取り返しがつかないレベルの。
今のあのひとに『ごめんなさい』と謝っても、もう以前のように笑って許してくれない気がする。
...何がいけなかったのかな。
何を間違えた?
どこから?そもそもなんで、こんな状態になったんだっけ。
キスを拒否したから?
だってあれは、今の微妙な関係でするのはダメだって思ったから。
それに、先輩はまだ怒ってたんだ、あのとき。
複雑な感情を、まるで私の手を握る力に込めてるみたいで。
....だから今するのは、ダメだって思って。



